1860年フィレンツェ創業のパネライコピーは、イタリア海軍の特殊潜水部隊のために極限の道具を生み出してきた。その軍事的遺産を現代に伝える中で、2007年はブランドにとって特別な年となった。自社開発ムーブメントの集大成として、初となるトゥールビヨン搭載モデルが誕生したのである。世界限定100本という希少性を誇るRef.PAM00276は、パネライの技術力と伝統が凝縮された、機械工学の金字塔である。
47mmのAISI 316Lステンレススチールケースは、クッション型のフォルムと特許取得の王冠プロテクターが特徴である。厚さ約15.1mmのボディは、一目でパネライと識別できる存在感を放つ。しかし、驚くべきはその軽量性だ。実際に手に取ると、47mmというサイズからは想像もつかない軽さで、腕元に自然と馴染む。
最大の特徴は、9時位置に配置された30秒トゥールビヨンにある。通常のトゥールビヨンが1分で1回転するのに対し、この革新的な機構は30秒で1回転する。しかも、テンプの回転軸がムーブメントの地板と平行に配置される「ラテラル(横型)トゥールビヨン」という独自の構造を採用している。これは、重力の影響をより効果的に相殺するためのパネライの独創的な解である。トゥールビヨンケージの回転速度を示すブルーのインジケーターが、スモールセコンドダイアル上を規則正しく動く様は、まるで深海の鼓動を見るようだ。
マットブラックのサンドイッチ構造文字盤には、12時位置に昼夜表示、6時位置にスモールセコンドが配され、GMT針が第二時間帯を示す。夜光塗料を施したアラビア数字とインデックスは、暗所でも圧倒的な視認性を誇る。
心臓部に搭載される自社製キャリバーP.2005は、239の部品から構成される手巻きムーブメントである。3つの香箱による6日間(144時間)という長期パワーリザーブを誇り、その残量はシースルーバックから扇型のインジケーターで確認できる。31石、28,800振動/時というスペックが、確かな精度を裏付けている。100mの防水性能とねじ込み式リューズも、パネライの遺伝子を継承する。
ブラックのワニ革ストラップと、大型のステンレススチール製ピンバックルが、全体の佇まいを引き締める。PAM00276は、単なる時計ではない。それは、パネライの自社開発ムーブメントの歴史に新たな1ページを刻んだ、100本だけの奇跡なのである。 |