ゴルフスイングの頂点で、クラブヘッドは時速200kmを超える。その衝撃は5000Gにも達し、通常の機械式時計なら即座に停止するだろう。しかし、リシャール・ミル「RM 055 バッバ・ワトソン」は、この極限の加速度を笑い飛ばすかのように、正確な時を刻み続ける。2012年に発表されたこのモデルは、プロゴルファー、バッバ・ワトソンとの協業によって生み出された、スポーツウォッチの新次元である。
ケースサイズは49.9mm x 42.7mm、厚さ13.1mm。トノー型(樽型)のフォルムは、一目でリシャール・ミルと識別できるアイコニックなシルエットだ。特筆すべきはその素材構成である。ベゼルにはATZセラミック(耐傷性に優れ、硬度はビッカース1400に達する)を、ケースバンドとバックベゼルには5級チタンを採用。さらにチタン部品の周囲にはホワイトラバーが高圧注入され、機敏な動きによる振動からムーブメントを完全に保護する。この構造が、5000Gもの衝撃に耐える驚異的な耐衝撃性を実現しているのだ。
文字盤は全面スケルトン仕様。5級チタン製の地板と橋板にはPVDおよびTitalyt®処理が施され、剛性と表面の平滑性を極限まで高めている。可変慣性擺輪(テンプ)は、4つの小型調整用重りによって慣性を微調整可能で、衝撃による精度低下を防ぐ。双発条盒(ダブルバレル)構造は、トルクの安定性を長期にわたって維持し、55時間のパワーリザーブを支える。
ラバーストラップは、激しい動きの中でも確実に腕にフィットし、30mの防水性能も日常のアクシデントには十分対応する。
RM 055は、単なる時計ではない。それは、バッバ・ワトソンの比類なきスイングを可能にする「腕元のマシン」であり、一瞬の力と永遠の精度を両立させた、リシャール・ミルの技術哲学の結晶である。 |