時計の世界に「重力との対話」を追求するモデルがある。ウブロの「トゥールビヨン バイ・アクシス レトログラード」は、その名の通り、二軸のトゥールビヨンとレトログラード(逆進)表示という二つの高度な複雑機構を融合させた、現代時計製造の到達点である。Ref.906.OX.0123.VR.AES13は、その中でもローズゴールドのケースに、セナへのオマージュを込めた特別な一本だ。
この時計の最大の特徴は、何よりもその心臓部にある。6時位置に配されたトゥールビヨンは、通常の一軸ではなく、二つの軸で回転する「バイ・アクシス」構造を採用している。一方の軸は60秒で、もう一方は30秒で回転し、理論上はるかに繊細な方法で重力の影響を打ち消す。この複雑な機構は、手巻きキャリバーHUB9006によって駆動され、約5日間(120時間)という驚異的なパワーリザーブを実現している。さらに、レトログラード表示は、時・分の針が一定の軌跡を描いた後に瞬時にゼロ位置へと戻る、視覚的にも魅了される機構だ。
ケースは18Kローズゴールドで鋳造され、直径44mmという存在感のあるサイズながら、そのシルエットは洗練されている。サファイアクリスタルは6時方向に大きく伸び、横からもトゥールビヨンケージの優雅な舞を鑑賞できるよう設計されている。スケルトン仕様のダイヤルからは、複雑に絡み合うムーブメントの構造が惜しみなく披露され、機械芸術の美しさを堪能できる。
世界限定41本という希少性も、この時計の特別さを際立たせている。ウブロが素材と機構の限界に挑み続ける姿勢を象徴する一本であり、時を計るだけでなく、時と重力の関係そのものを腕元で体感させる、まさに現代のマスターピースである。 |