1972年、ジェラルド・ジェンタの筆によって生み出されたロイヤルオークは、高級ステンレススチールウォッチという新たなジャンルを創造した。その伝説のDNAを受け継ぎながら、2021年に誕生したRef.26715ST.OO.1356ST.01は、38mmという絶妙なプロポーションで、クロノグラフ機能という複雑性を現代に昇華させた逸品である。
この時計の第一印象を決定づけるのは、38mmのステンレススチールケースが放つ完璧な均衡美である。ロイヤルオークの代名詞である八角形のベゼルは、8本の六角形スクリューで固定され、サテン仕上げとポリッシュ仕上げの巧みなコントラストが、建築的な陰影を創り出す。厚さはわずか11mmに抑えられ、ラグからブレスレットへと流れるような曲線を描くそのフォルムは、装着する腕にまるで吸い付くように馴染む。
最大の魅力は、オーデマ ピゲの伝統を継承する「プチ・タペストリー」模様のブルーダイアルにある。光の加減で深海の青から夜空の藍へと表情を変えるこの神秘的な文字盤は、規則正しい格子模様が奥行きと高級感を同時に演出している。3時位置の30分積算計、6時位置のスモールセコンド、9時位置の12時間積算計が織りなすレイアウトは、視認性と美しさの絶妙なバランスを追求している。4時と5時の間には日付表示窓が控えめに配置され、実用性を損なわない配慮が光る。ホワイトゴールド製のアプライドインデックスと針には夜光塗料が施され、暗所でも確かな視認性を確保する。
心臓部に搭載されるのは、フレデリック・ピゲの名機キャリバー1185をベースに開発された自動巻きキャリバー2385である。厚さわずか5.5mmという驚異的な薄さを誇りながら、304の部品と37石から構成されるこのムーブメントは、40時間のパワーリザーブを確保している。22Kゴールドのローターとコート・ド・ジュネーブ装飾は、シースルーではないケースバックの向こう側で、静かにその美しさを秘めている。これは「見せるため」ではなく「身に着けるため」の複雑機構という、ロイヤルオークの伝統に忠実な選択である。
一体化したステンレススチール製ブレスレットは、APフォールディングクラスプで確実に固定され、50mの防水性能も日常使いにおける実用的な配慮である。
26715STは、単なる時計ではない。それは、1970年代の伝説を受け継ぎながら、38mmという現代的な解釈で昇華させた、八角形の夜明けを告げる一本なのである。 |