1917年、ルイ・カルティエは戦車(タンク)の上面視からインスピレーションを得て、時計史に革命をもたらす矩形の時計を生み出した。それから100年近くが経った2013年、SIHH(高級時計見本市)でカルティエはこの伝説的コレクションに新たな息吹を吹き込んだ。「タンクMC(マステル・コンプリケーション)」の登場である。Ref.W5330003は、その中でも特にピュアな三針モデルとして、伝統と革新の融合を体現している。
47mm×34mmのステンレススチールケースは、オリジナルのタンクのプロポーションを忠実に継承しながらも、厚みを増すことでより力強い存在感を獲得している。特徴的な「ブラン(側面)」と呼ばれるケースの垂直部分は、ポリッシュ仕上げの面とサテン仕上げの面が幾何学的なコントラストを生み出し、光を受けるたびに複雑な陰影を描き出す。リューズにはカルティエ伝統のカボションカットされたスピネル(合成宝石)が輝き、気品を添えている。
この時計の最大の魅力は、サンレイ仕上げのシルバーダイアルに配されたブルーの剣型針「フレイム・ドゥ・カルティエ」と、ブラックのローマ数字の美しいコントラストである。従来のタンクがローマ数字の中心に時分針を合わせるのに対し、このMCモデルでは針の根元が数字の輪郭と重なるよう配置されており、視覚的な深みを生み出している。
このモデルでは、インデックスの外側に視認性を高めるためのトラックが追加されているが、これは機能美の追求でありながら、デザインの美しさを損なわないカルティエの妙手である。
特筆すべきは、このモデルが搭載する自社製キャリバル1904-PS MCである。厚さわずか4mmという超薄型自動巻きムーブメントは、タンクMCの名前にある「MC」=マステル・コンプリケーション(自社製複雑時計)の名にふさわしく、38時間のパワーリザーブを誇る。
ビス止め式のケースバックにサファイアクリスタルを採用し、その精密な動きを覗き見ることができる。ブラックのアリゲーターストラップに、フォールディングバックルを備えたW5330003は、時を測る道具である前に、時の芸術作品なのである。 |