ケースは軽量かつ高強度のチタン製で、表面には耐傷性に優れたDLC（ダイヤモンドライクカーボン）コーティングが施されている。この特殊処理により、暗闇の深海でも反射を抑え、サメなどの海洋生物を刺激しない配慮がなされている。ケース構造は、極限の水圧に耐えるため、ブライトリング独自の工学設計が採用されている。

文字盤は、深海の闇の中でも確実な視認性を追求したデザインが特徴だ。ブラックの背景に、大型の幾何学形状インデックスと剣形の針が鮮明に浮かび上がる。針とインデックスには豊富な夜光塗料が塗布され、完全な暗闇でも長時間にわたり確実な視認性を保証する。日付表示は3時位置に配置され、シンプルながら実用的な機能を備える。

この時計の真価は、その驚異的な防水性能にある。3,000メートル（約9,840フィート）という耐水圧は、有人潜水艇の活動深度をも凌駕する。これを実現するため、ケースバックにはヘリウム排気バルブが装備され、飽和潜水後の安全な減圧を可能にしている。サファイアクリスタルは、極限の水圧に耐える厚みを持ちながら、視認性を確保している。

心臓部のブライトリング Caliber 17自動巻きムーブメントは、極限環境下での信頼性を最優先に設計されている。耐磁性と耐衝撃性に優れ、約38時間のパワーリザーブを実現する。このムーブメントは、深海という過酷な環境でも確実な精度を維持するように調整されている。

回転ベゼルは単方向性で、潜水時間の計測に最適化されている。ベゼルの操作感は確実で、手袋を着用した状態でも容易に操作できる。目盛りには夜光塗料が施され、暗闇での使用にも対応する。

ケース全体の構造は、極限の圧力環境を想定した工学計算に基づいて設計されている。各パーツの接合部には特別なシーリング技術が採用され、水深3,000メートルの水圧にも耐える密封性を実現している。

ミリタリータイプのラバーストラップは、海水や塩分に強く、長時間の潜水にも耐える耐久性を持つ。ストラップにはDLCコーティングを施したチタン製のフォールディングクラスプが装備され、確実な装着感を提供する。

AB01821A1B1X2は、単なる時計を超えて、深海探査という人類の挑戦に寄り添う精密計器である。その存在は、ブライトリングが「計器専門メーカー」として培ってきた技術的遺産が、海洋科学や探査の最前線で活躍することを証明している。この時計を腕にした者は、海の最深部への探検という、人類の究極の冒険に参加する資格を得るのである。