時計の世界には、確立された伝統と規範がある。しかし、フランク・ミュラーは、その常識に「クレイジー」なまでに挑戦し続ける、唯一無二の存在だ。その精神を、スポーティかつコンテンポラリーな形で体現するのが「ヴァンガード」シリーズ、そしてモデル「V45 SCDT」である。
この時計の第一印象は、その独創的な「ケース形状」に集約される。ブランドの代名詞である縦長の「トノー(樽形)」ケースを、ダイナミックに拡大・進化させたその姿は、ただならぬ個性を放っている。しかし、それは単なる奇抜さではない。カーブを描き、手首に驚くほどフィットするフォルムは、独自の美学に裏打ちされた、実用的なエルゴノミクスの賜物なのである。
文字盤は、フランク・ミュラーの真骨頂とも言える、アーティスティックな遊び心に満ちている。このモデルでは、カラフルな文字盤と、複数のインダイヤルが複雑に配置されたダイヤルが特徴的だ。クロノグラフ機能とデイト表示をバランスよく配し、ながらも、その配列自体がひとつのアートのような表情を作り出す。数字のデザインも独創的で、視認性と芸術性を高い次元で両立させている。
ケースとブレスレットには、ブラックPVDコーティングを施したチタニウムなどが用いられることが多く、軽量かつ頑健な特性に、モダンでシャープな印象を加えている。
フランク・ミュラー ヴァンガード V45 SCDTは、共通の価値観に安住しない、独自の美学を持った個人のための時計である。それは、時計を「時を刻む機械」としてだけでなく、「自己表現のジャンル」として捉える者への、最もパワフルな答えなのである。 |