A.ランゲ&ゾーネ1815トゥールビヨン730.025Fは、ドレスウォッチの枠を越えた詩である。39.5 mmのホワイトゴールドケースは厚さ11.1 mmに抑えられ、懐中時計の端正さを現代に蘇らせる。ケース側面は鏡面仕上げ、ベゼルは細いステップで重ね、光が柔らかに跳ね返る。
文字盤は純粋な銀製で、中央から外周へゆるやかに広がるサンバーストが、森の朝の靄のように深みを生む。細長いショーフェン針と、ドット・ローマ数字の組み合わせは、1815年の創業期を思わせるクラシックな顔立ち。12時位置に開けられたトゥールビヨン窓は、直径12.9 mmの大きな開口で、秒針を兼ねるケージが1分ごとに優雅に舞う。
ムーブメントは手巻きキャリバーL102.1。厚さ4.7 mmという薄型ボディに、振り子を含むトゥールビヨン機構を収め、72時間パワーリザーブを確保。3番車をトゥールビヨンケージと直結し、秒表示を省略することで、ダイアルは極限までシンプルに整えられた。プレートとブリッジはドイツ銀で、グラスヒュッテ・ストライプと手彫りのスワンネックが、森の木漏れ日を思わせる。裏蓋はサファイアクリスタルで、金製スクリューが秒針の回転を静かに見守る。
ブラウンアリゲーターストラップは、Lange独自のピンバックルで固定。着けた瞬間、森の静謐と時の流れが一体となる。730.025Fは、時計という枠を超えた芸術である。 |